契約書は数年前に電子化済み、電子契約も導入してリモートワーク体制は万全!在宅勤務を夢見た法務室の岩國さんの誤算とは!?
緊急事態宣言が出された以後もどうしても出社しなくてはならない理由の代表として上げられがちな契約書への押印ですが、ウイングアーク1stの法務室では緊急事態宣言が出された以後、ほとんど出社せずに業務をこなすことができているそうです。リモートワークでの法務業務を可能にしたのは兼ねてから進めてきた契約の電子化でした。今回はウイングアーク1stの法務業務がどのようになっていて、いかにして電子化を実現させたのか、そのメリット・デメリットについて法務室の岩國さんに話を聞きました。
契約書は数年前にすでに電子化済みだった
勤務体制がコロナ禍の影響を受ける以前からウイングアーク1stでは、締結した契約書類は全て電子管理されています。自社製品であるSPAとMotionBoard Cloudを活用し、契約書を全て電子化し、簡単に閲覧・検索できるような管理体制が、数年前には構築できていました。紙の書類を管理する電子化以前の体制ですと、法務室以外の人間が契約内容を直接確認することは難しかったのですが、電子化したことにより契約申請を行う部署や担当者がMotionBoard上で閲覧できるようになりました。
もともとは電子化の作業自体も法務部で行っていましたが、契約書をPDF化するための作業が滞ってしまうことも。自社製品を活用し、契約書のPDF化の作業そのものを、ワークフロー内に組み込む事で、こういった作業の効率化を目指して契約書の電子化を推進しました。
それに加えて、契約自体を電子化する「電子契約」も導入しました。世界に見ると電子契約は急速に標準化しつつあります。日本ではクラウドサインやドキュサインなどのサービスがよく知られています。クラウドサインは弁護士ドットコムが提供している日本独自のサービスで、最近はテレビCMなども打っているので知名度も高くなってきていると思いますが、弁護士がやっている、ということで信頼性も高いことが特徴です。もう一つのドキュサインというサービスは、世界でもっとも導入事例の多い電子契約サービスで、圧倒的な知名度を誇ります。グローバル視点で考えた時にドキュサインの方が弊社に適していると考え、ウイングアーク1stではドキュサインを導入することにしました。
電子化に踏み切ったタイミング
もともとは、現在の新型コロナウイルスの影響に関係なく電子契約は始めるつもりでした。昨年の秋のパートナー制度の刷新の際に、300~400社との契約合意が必要でした。これらの契約切り替えを電子契約で終え、その際に、順次すべての契約書への切り替えの準備を進めていたところでした。総務部の取り組みの記事にもある通り、ハンコ問題解決のためにも、全社リモートワークが開始してからは、全契約書への切り替えを最優先事項として取り組みました。
今後は、基本的には全ての契約を電子契約で行う予定ですが、一部の会社ではまだ電子契約が認められていないので、全てを切り替えることは現段階では難しいと考えています。一方で、特に地方拠点では、これまで、東京本社に紙の契約書を郵送し、押印したものを送り返してもらうといったプロセスに日数がかかっていたため、これらの手間を省いて契約が進められる電子契約を歓迎する動きもあります。また、スタートアップなど新しい会社の場合は電子契約に抵抗がないどころか、そもそも電子契約を前提としている場合もあり、今後ますます契約の電子化は進んでいくと思います。
契約書は、PDFのみでしか存在せず紙がなくても法律上の問題はありません。シンプルに考えると契約というものは両者が合意したという証拠があればいいだけですから。しかし、電子契約の場合は改ざんされる可能性が上がる、とは言われています。そのため、改ざんがないことを保証してくれるドキュサインなどの信頼性が必要、ということになります。これはドキュサインを選択した大きな理由の一つでもあります。今後はたとえばブロックチェーンなどの新しい技術も契約業務に使用されるようになってくるのではないでしょうか。
法務室で管理している紙の契約書は、基本的に手元には置かず、倉庫で管理をしています。紙もありつつ、PDFもあれば、二重にバックアップされているので安心といえば安心ですが、内容は全てPDF化されているので、倉庫から契約書を取り出すことは基本的にはありませんね。なので、紙がどうしても必要か、というのは微妙なところではありますが、伝統的な法務部はやはり紙の契約書に捺印する、という文化が根強く残っています。
変わりゆく法務の役割、そして在宅勤務になって変わったこと
雑務に追われるとついつい忘れがちになってしまいますが、法務が担っている最重要業務は契約の内容を確認することです。それ以外の業務、たとえば紙の契約書をどのように保管しておくかについて考えるのは、法務の本来の業務ではありません。美しくハンコを押すことも我々の重要任務ではありません(笑)。電子化、リモートワーク化が進むにつれて、より本来の業務に集中できるようになるのではないかと考えています。
さらに言うと、契約書の内容のチェックにAIを使う、というサービスも増えてきています。契約書を比較し、過不足分を洗い出す、などの作業はもはや人間が行う必要はありません。我々はGVA TECH(ジーヴァテック)社が提供しているAI-CONというサービスを活用しています。リーガルテックと呼ばれる法律に関する業務を簡略化してくれるテクノロジーは、今後も増えていくと思いますし、AIによる契約書チェックは当たり前になってくるはずです。自動化が進むことで法務の人数も最小限に抑えられますし、そこに弊社独自のノウハウを積み上げていくことで、極端な話、担当者がいなくなっても契約業務に支障が出ない、という環境を作れるのではないかと思っています。電子契約はその環境を作るために必要なステップであり、一つの布石であると考えています。
在宅勤務になって変わったことですか?ミーティングがウェブ会議になったくらいで実質ほとんど変わっていないと思っています。もともと通勤時間が無駄だと思っていたので、できるだけ会社に行かなくてよい環境づくりに努めてきました。ところが、いざ在宅勤務を始めてみると、たとえば仕事をしながら子供の世話をする大変さにちょっと困惑しています。寝るか、本を読むか、スマホをいじるか、くらいしか選択肢がないと思っていた通勤時間も、在宅を始めてみると休息時間として割と役に立っていたのでは、と思い始めたり。そういう意味では、想定していたのとはちょっと違ったかもしれません。在宅勤務=パラダイス、というわけでは決してなかったです(笑)
(田川)